彼岸からの風

ベールに覆われた惑星には、ただひとつの長い参道があった。私はその道を歩む。滅びゆく星の記憶を胸に、新しい誕生に向かって。点在する街の光は遠く、わずかな照明が参道の両側を照らす。土には草一本生えず、ただ硬い石畳だけが永遠に続く。この道を私は永遠に歩いているような気がする。

孤独ではない。私と一緒に歩むのは、私の第二の存在である影。影は過去の私、未来の私、そして私自身だ。影は時に私より先に歩き、時に後ろからついてくる。私たちは語りかけることなく共に旅を続ける。私が思考すれば影もまた問いかけ、私が疑問を呈すれば影もまた静かにその答えを探す。

一度影が問うた。「何故、私たちはここを歩くのか?」

私は知らない。ただ、歩く理由を求めることが、この旅の目的なのかもしれないと思えた。参道の果てに何があるのか、そこに辿り着くことが果たして救済なのか、省みることなく歩き続けるか。

歩みを止めることなく、影と私は話し合った。「孤独感はないのか?」と影。確かにこの旅は寂しさに満ちているが、影がそばにいれば決してひとりではない。孤独感はあるが孤独ではない。

影の存在が時に重く感じられる瞬間もある。自らの影を見ることで自分自身の深い部分と対峙することになるからだ。影は私のすべてを知り尽くした存在。私が見ようとしない自己も、影ははっきりと映し出す。

あるとき、土砂降りの雨が降り出した。参道は一層静寂を増す。雨に打たれた石畳は光を反射し、一線の道がいくつもの鏡のように見えた。影は雨で消えたかのように見え、私は一時的に真にひとりぼっちになったように感じた。しかし、雨が止み日が差し込むと、再び影が現れた。「君は消えていなかったのか」と私が問うと、「私はいつもここにいる」と影は静かに答えた。

その後も私たちは参道を歩く。景色が変わることはないが、心の動きは常に変わり続ける。影と私、私と影、それぞれが互いに見えない糸で結ばれている。そして、それがこの硬質な世界での私たちの繋がりであり、孤独とともにある一種の共生を示す。

どれほどの時間が経過したか、私にはわからない。ただ、一つ確かなことは、この参道の旅が終わることはないかもしれないということだ。ただ一つ、回収されるべき伏線があるとすれば、それは私たちがいつの日か自らの存在の意味と向き合う日が来ることだ。その日が訪れるまで、影と共に。

風が吹く。それはどこからともなくやってきて、私の髪をかすかに揺らす。また一歩、前へ。

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