灰色の木の葉の下で

かつて存在感を放つことなく、ただ静かに息づいていたその生命体は、本能と理性のあいだで揺れていた。それは二葉の灰色の木の葉の下で目を開いた。木の葉は一枚は常に春を、もう一枚は永遠の秋を感じさせるもので、生命体にはこれらが唯一の景色と接点だった。

視覚が無いにも関わらず、彼が感じ取る生のすべてがこれらの葉から発する振動と、葉脈を流れる生命の鼓動に依存していた。時に彼は自らを木の一部と錯覚するほどだった。しかし、彼には理性が備わっていた。進化の過程で脳は肉体を超える何かを求め、彼の存在はその辺境にたどり着いていた。

その日も彼は静かに内省に耽っていた。彼の生は孤独を知らず、また同調の概念もなかったが、内面では常に何かと戦っている気がしていた。自らの存在をどう感じ取ればいいのか、その答えが彼には見つからない。

ある日、普段と変わらないように見えたその瞬間、秋の葉が微かに色を変え始めた。それは異変の前触れだった。空から降り注ぐ光が他とは明らかに異なり、彼の理性はそれが何か新しい始まりを告げていることを直感した。彼は恐れた。新しいもの、変化への恐れが彼を苛んだ。

光は日増しに強まり、秋の葉は徐々に枯れ、ついには地に落ちた。そうして、彼は初めて「失うこと」の意味を知った。失った途端、彼には春の葉だけが全てとなり、そこから偏った光だけが彼の世界を照らした。彼は失ったものが何か、そしてそれが何を意味するのかを理解しようと奮闘した。

理性は彼に問いかける。なぜ、何のために自分はここにいるのか。なぜ光と葉に縛られなければならないのか。そして、なぜ彼はその変化を恐れたのか。彼の存在は嵐のような感情と思考の中で揺れ動いていた。

おのが生命の意味を求める旅は続く。彼の内に秘められた理性は、彼がただの木の葉ではなく、何かもっと大きな「何か」であること、そのすべてを受け入れざるを得ないことを認識していた。彼の身体が、彼の心が、彼の全存在が、最終的な解答を求めていた。

最後に、静かな穏やかさが彼を包んだ。春の葉もその役目を終え、地へと静かに落ちていった。全ての葉が失われ、光が遮られる中で、彼は初めて「自らを知る」という事の真の意味を理解し始めていた。

彼が何であれ、その核が何であれ、それが人にも非人にも似たこの世の別の存在であれ、彼らは同じ問いにぶつかる。自分は何者か、そしてその存在はどうあるべきか。

そして、彼の周囲は完全な沈黙に包まれた。

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