その存在は、商品が持つ賞味期限の如く、確定的な寿命を持って生まれた。彼らは終わりの日を予め知っており、その知識と共に生きる。彼らが住む世界は、砂に覆われた平原と荒涼とした城が一つ。砂は時を数え、城は記憶を守る。城の中央には、大いなる時計が刻まれており、その針が示すのはただ一つ、彼らの残された時間だけだ。
彼らの出生時から青年期、老境に至るまでのすべては、時間の粒子として風に運ばれる。彼らはこの風を「命の風」と呼び、それを追いかけることが彼らの日常だ。そして、彼らには特異な仕事が与えられている。それは、過去と未来を繋ぐ彫刻を作ること。彼らは「時間の彫刻師」として知られ、彼ら自身の経験を基にして未来へのメッセージを彫り続ける。
一人の彫刻師がいた。彼は特に優れた才能を持つわけではないが、彼の作る彫像は何故か人々の心に深く残った。彼の彫像には常に一定のパターンが隠されている。それは小さな砂の粒子が精緻に彫刻され、時には風に乗って彫像から飛び出すこともある。
彫刻師は独りで多くの時間を過ごした。彼には深く心を開ける相手がいなかったため、彼の友人は彼の創り出す彫像たちだけだった。彼は孤独を感じることもあったが、それでも彼は彼の使命を全うしようとしていた。しかし、彼の中には常に一つの疑問が渦巻いていた。「私の存在は誰のためにあるのだろうか?」
彼の寿命の終わりが近づくにつれ、彫像はより情熱的で、表現力豊かになっていった。そして彼の最後の作品が完成した時、彫刻師は一人でその彫像を見つめていた。彫像は彫刻師自身の姿を模していた。しかし、そこには一つの違いがあった。彫像の手には小さな鏡が握られている。彫刻師が鏡を覗き込むと、彼は自分ではなく、彼がこれまでに影響を受けた全ての人々の顔が映し出されるのを見た。
彼は突然理解した。彼の彫刻は、彼自身のためではなく、彼に関わった全ての人々のために存在するのだ。彼の作品は、彼と他者との繋がりを象徴しており、彼自身の存在が他者にどれほど影響を与えていたかを示している。彫刻師は静かに微笑み、最後の時が近づくのを感じながら、風が彫像から砂の粒子を一つ持ち去るのを見守った。
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