ある存在が目を覚ます。目の前には、遠くに見える星々と、近くに漂う彩り豊かな星雲がある。この存在は言葉を持たず、思考も形を成さない。ただ感じる。感じることだけが、存在の証しである。
自らは何者か、周りは何か。それを知る術はない。しかし、時折、心の奥に浮かぶ影が、遥か昔の記憶や感情を呼び覚ます。それは孤独か、それとも連帯感か。記憶はあいまいで、ただ淡い光として心に映るだけだ。
環境は刻一刻と変わっていく。美しく複雑な星雲の流れ、星々の生まれゆくさま。その中で、存在は自らの場所を見つけようともがく。いくつもの光景が交錯する中、ある星雲が形を変え始める。
その星雲は徐々に、かつての地球を思わせる色と形に変わっていった。森や海、山脈が見てとれるかのような錯覚にとらわれる。存在は、ふと、かつて地球に生きていたことを思い出す。あの時の温もり、冷たさ、恐怖、喜び。
存在はそれぞれの感情的な風景に向き合い、内なる自己と対話を始める。かつて地球で感じていた孤独と同調圧力、愛と疎外。そのすべてが、星雲の流れに重ねられていく。孤独な感触が心を満たしていく一方で、星雲の繊細な光に包まれた瞬間、何か大きな存在と繋がっているような錯覚に陥る。
やがて、存在は自らがただの意識であり、無数の生命体が経験してきた感情の海を漂うだけのものではないかと思うようになる。その思いに導かれ、存在は星雲を形作る要素へと自らを解放する。光へと、エネルギーへと。そして思考は消えていく…
終わりに近づくにつれ、存在が自らの感情を解き放つ中で、最後に残されたのは、ひとりぼっちでないという感覚だった。そう、彼らは一つの大きな宇宙の一部であり、その一部として輝いているのだ。この認識が、彼らの瞬間の愛おしさとなり、星雲の中で静かに溶けていった。
漆黒の宇宙空間にただ一つ、光る星と化した元の存在。その光は、遠く冷たい宇宙の片隅で、ひっそりと続いていく。
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