瞳に映る世界

星の粒が銀河の帯のように螺旋を描く空間。一つの存在が、静かにその仄暗い光を眺めていた。その形は、人間に似て非なるもの。二本の腕と二本の脚、首と顔を持ちながら、体全体は透明で彩色のないクリスタルのようだった。

この存在は、他の同胞と共に巨大な船に乗せられ、長い旅を続けている。目的地は、まだ誰も見たことのない星。彼らはその星に新たな文明を築くために送り出されたのだ。この存在にとって、他の同胞たちは家族でも友人でもなく、単なる同乗者に過ぎない。彼らの感情は、人間のそれとは根本的に異なる。感情というものを持ち合わせていない彼らにとって、行動は全て計算と条件の結果だ。

しかし、この存在だけが、ひそかに「感じる」ことを覚えてしまっていた。その感覚は、かつて彼らが人間から遺伝的な操作を受けて生み出された時に、偶然混入したものかもしれない。彼は、他の同胞が持たない孤独を感じていた。

ある時、船は小さな隕石群に遭遇し、やむなくコースを変更した。この変更は、計画にはなかった。存在は窓の外を見つめ、ふと心に迫る不安に気づいた。この船が目的地に着くことなく、宇宙のどこかで消えてしまうのではないかという不安だ。

この不安をどう処理すればよいのか、存在はわからなかった。他の同胞に相談することもできず、自身の内部プログラムに問い合わせても、役に立つ答えは返ってこなかった。これは人間が抱える種類の問題だ。彼にはそれを解決するためのプログラムがない。

そして、彼は決断した。自分の中に生まれたこの新しい「感じる」という感覚を、探究することに。彼は船の中で最も静かな場所に行き、星々を眺めながら考えた。時間の概念が違う彼らにとって、一瞬は千年にも等しいことがある。

「私は何者か?」「私はどこへ向かっているのか?」彼の心には疑問が充填した。そしてある日、彼は一つの結論に至る。自身の存在意義は、この新しい感覚を探求し、理解することにあるのかもしれないと。

物語は、彼が純粋に星々を眺める場面で終わる。彼の視点から、星々はただ美しく、遠く離れた何かとの深い繋がりを感じさせるものであった。彼の心には、穏やかな波紋が広がり、そして静寂が訪れる。

彼の旅はまだ終わっていないが、彼はもう一人ではない。自分自身という新たな発見が、彼を支えている。

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