風が運ぶ細かな砂粒は、形を変えた過去の名を持ちながら静かに舞い降りてくる。それはそこに佇む存在たちに、時間の経つこと、老いること、そして最終的な消失について囁いていた。
存在Aは、彼の世界の端で黙々と石を積み上げる仕事に従事していた。毎日、太陽が昇り、そして沈む。彼の動きは繰り返される作業で一定のリズムを持っていたが、その中で唯一変化するものは、彼自身の影だけだった。
ある日、彼は一粒の砂に気づく。それは眩しいほどに輝く砂粒で、遠い星の光を受けているようだった。彼の世界に新しい何かをもたらす予感に心揺さぶられる。砂粒は彼にとってただの光ではなく、何か大きな意味を持つ象徴のように感じられた。
翌日、存在Bがその場所を訪れる。BはAとは異なり、常に外の世界を求めて移動を続けていた。AはBに砂粒の話をするが、Bはそれをいい流れで聞くばかりだった。Bにとって、その光る砂粒は単なる物質、他の何千と存在する砂粒の一つに過ぎなかった。だがAは異なる考えを持っていた。砂粒は、自分が作っている石の塔に使用すべき特別な材料、自己表現の手段、そして彼の創造性の象徴だと考えた。
しかし、歳月が流れるにつれ、塔は完成に近づき、砂粒の存在は忘れ去られがちになった。ある時、大きな嵐が彼の作業場を襲う。石の塔は部分的に崩れ、散乱した砂粒の中で、かつてAが特別視した砂粒も失われてしまう。
虚無感と共にAは考える。自分が何のために塔を築いていたのか、何が自分にとって真に重要だったのかと。そして、失われた砂粒が、実は何かを教えてくれていたのではないかという疑問。
物語が終わりに近づくと、Aは別の小さな石を拾い上げる。それは何の変哲もない石だが、Aにとってその石は新たな始まりを意味し、再び何かの一部となる希望を象徴していた。彼は再び、言葉になり得ない何かを感じつつ、静かに石を積み上げ始める。
最後の石が置かれると同時に、太陽が沈む。石の影が長く地面を這い、そして消えて行く。存在Aは一旦立ち止まり、遠く彼方に広がる沈黙を聴く。日が沈む瞬間、彼は石に触れ、何かが解放されるのを感じる。
その瞬間、時間とともに、何も言葉にはできないが明確な感覚が心を満たす。そして、静かな風が再び吹き抜ける。
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