彼方の境界線

時空を超えた世界の、渦中にある一つの星。ここでは存在は自らの形を選べ、変わり続ける生が注がれる運命を持っていた。ただし、その自由には代償が伴う。形を変えるたびに、彼らの内部では何かが壊れ、そして再び組み立てられる。

二つの存在がここにいた。一つは常に流れを追い求める者、もう一つは静かに佇む者。初めてこの星に足を踏み入れたとき、二つは互いに引かれあった。変わりゆくことの美しさと、変わらないことの静けさが、不思議な調和を生んでいたからだ。

自由に形を変えられる星で、流れを追う存在は常に新しい風景を求め、形を変えては新たな体験を積み重ねていた。しかし、そうする度に些細な記憶や感情が削ぎ落とされていくことに気づき始めていた。一方、静かに佇む存在は、変化を避けつつも、その静けさの中で密かに孤独を感じていた。

日が経つにつれて、流れ追い者は自分が何を失っているのか、その重みを知るようになる。その都度形を変えても、失われたものは戻ってこない。静かな者は、変化を恐れるあまり、新たな繋がりを持つことからも遠ざかっていた。

あるとき、二つの存在は変化の季節を迎える。自らの姿を変えずにはいられない時が来たのだ。流れ追い者は、かつての美しい記憶を手放すことに耐えられず、変化しないという選択をした。静かな者は、もはや孤独が耐え難くなり、大胆にも流れる形を選び、新たな体験を求めた。

時間が過ぎ、星の力が彼らを再び近づけたとき、二つの存在はお互いを認識できなかった。どちらもかつての自分ではなく、変わり果てていたからだ。しかし、深い絆のようなものを感じ取り、ゆっくりと歩み寄り、新たな関係を築き始めた。

この星での長い旅を経て、二つの存在は理解した。変わることも、変わらないことも、それぞれに苦悩と喜びがあるという事実を。そして、どのように存在し続けるかは、それぞれが選び、受け入れることの重要性を。

変化の風が再び彼らを包む中で、彼らは互いの手を取り合う。一つは変わり続けることを、もう一つは変わらずにいることを選んだが、それぞれの選択が他者との深い繋がりを求めていることに変わりはない。そして風は、静かに彼らの周りを流れ続ける。

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