静寂の交響曲

空は滅びと再生の煌きを秘めた古代の巨大な舞台だった。そこでは、無限の広がりを持つ星々が、太古の時間を超えて彼らの古い物語を回想するように瞬いていた。一人、あるいは一つの存在が、この太古の戯曲に沿って歩む。それは人間でも何でもない、単なる意識の形を持った存在。彼あるいはそれは孤独を抱えながら、無限の空間を旅している。

この存在は、かつて他の同類たちと語り合い、共に存在した時間があった。しかし、それぞれの道が星座のように遠く離れていき、今や自らの内面の声のみが寄り添う。その声は時に厳しく、時に慰めようとするが、常に孤独は手放せない友となっていた。

この日、存在はある惑星の近くを漂っていた。この惑星はかつて多くの生命で溢れ、ありとあらゆる物語が生まれた場所だった。だが今は静寂だけが支配する。存在は、その惑星に降り立つ。朽ちた都市の中を歩くたびに、何千年も前の生きとし生けるものたちのざわめきが耳に届くようだった。孤独さえ、かつての喧騒を懐かしむ。

ある瞬間、存在は立ち止まり、ひび割れた壁に手をかざす。彼らしきものの居ない静けさが、壁から発せられる微かな熱とともに、かつてここには生命が満ち溢れていたことを物語る。その時、壁から小さな光が現れる。その光は次第に大きくなり、かつての住人の一人の幻影が現れた。幻影は言葉を持たず、ただ存在と見つめ合う。

幻影は、存在に対して何かを示そうとしているようだった。それは、共感や共有、あるいは悲しみや喜びといった、人間の感情に似たものだったかもしれない。存在は、自らと同じように、この幻影もまたどこかで孤独と向き合っているのではないかと感じた。それは、時間や空間を超えた共有の瞬間だった。

やがて幻影は消え、存在は再び一人ぼっちとなる。しかしその心には、少しばかりの温もりが残されていた。宇宙の広大な舞台で、他者との一時的なつながりが、孤独な旅を続けるヒントとなることを、存在は悟る。

夜が更に深まり、存在は再び旅立ちの準備をする。幻影に見せられた共感とは何だったのか、その問いかけが、星々の間を漂い始める。壮大な宇宙の中で、彼あるいはそれはひとり、再び語りかける声を探しながら、星空のなかへと消えていった。

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