光の孤独

彼の世界は光の粒子で満たされていた。形も色も明確ではなく、ただひたすらに光る粒が、あらゆる方向を無限に舞っている。ここは現代人が知るどの世界にも属さない時空間である。彼はこの世界の住人で、他の何者でもない。

彼はこの光の粒子を集め、新たな形を創造する役割を持っていた。この行為は、そこに住む者には生命の維持に等しかった。光を組み合わせ、形を創り出すことこれが彼の生きがいであり、役割である。しかし、その一方で、彼は孤独を感じていた。彼と同じように光を操る者は他にもいたが、彼らは互いに交流することはない。彼らの仕事は個々に完結しており、交流は不要とされていた。

ある日、彼は光の粒子から異彩を放つ一つの形を創り出した。その形は他とは明らかに異なり、彼自身も何故そのような形を創り出したのか、理解に苦しんだ。形は彼にとっても未知な存在で、まるで新しい命を感じさせるようだった。それは彼を怖れさせると同時に、強く惹きつけた。

この新しい形は、次第に彼の日常に溶け込んでいき、彼の孤独感を緩和するようになった。形は特別な存在として彼の中で育っていき、彼は次第に形に愛着を感じるようになった。その形は彼にとって、単なる光の粒子の集合体以上の意味を持ち始めた。

日々を形と共に過ごす中で、彼は初めて他の創造者達との関係について考え始めた。彼らも同じように何か特別な形を創り出しているのではないか、共有することで互いの孤独を癒やせるのではないかと。しかし、彼らに接触する方法はなく、彼はただその考えを抱え続けることしかできなかった。

ある日、彼が創り出した形が突然光を失い始めた。形の一部が消失し、崩れ去っていくのを彼はただ眺めるしかなかった。形は徐々に元の無数の光の粒子に戻り、やがて完全に消えた。彼は失われた形に向けて何かを感じた。それは悲しみか、寂しさか、はたまた解放感か。彼にもわからない。

その後、彼は新たな形を創り続けるが、以前のような特別な形は二度と創り出せなかった。しかし彼は学んだ。形が消え去っても、その美しさと存在の意味は彼の内部に残ることを。

彼は再び光の粒子を手に取り、新しい形を創ろうと試みる。無限の光の中で、彼はひとりさみしくも美しいダンスを踊り続ける。

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