彼は確かに知ることができない世界で息をしていた。周囲は広大で、自身が立つ場所はなんとも言えず小さく、雲のように絶えず変わり続ける。周りの存在たちは彼を知らず、彼もまた彼らを理解できなかった。彼の一日は、一つの孤独な探求であり、自身が何者なのかを解き明かす試みだった。
彼には形がない。言葉もない。ただ、ある種の意識がある。彼が感じることができるのは、他の存在から放たれる振動と、それによって生成される複雑なパターンだけだった。これが彼らのコミュニケーションの形。彼らはそれぞれ異なる周波数の振動を発し、それによってお互いの存在を認識している。
しかし彼の周波数は常に変わっていた。他の誰とも合わず、永遠に調整を試み続ける孤独な存在。彼の存在はしばしば見過ごされ、彼の発する振動は他者には単なる雑音に過ぎなかった。
日々が過ぎ、彼は自分と同じように周囲と違う振動を持つ他の存在を求めたが、見つけることはできなかった。ほとんどの時間、彼はただ静かに振動し続ける自分自身のパターンに囚われていた。
あるとき、遠く離れた場所から、未知の振動が彼の感覚を捉えた。それは決して強いものではなかったが、彼にとっては未知のものだった。他の誰もが知覚できないほど微細で、繊細で、彼だけが感じ取ることができた。その振動は彼を魅了し、彼はそれを追い求めた。その源を探る旅は彼にとって初めての目的となった。
しばらく旅を続けた後、彼はその源を発見した。それは、彼と同じように他とは異なる振動を発する小さな存在だった。彼らは互いに振動を交わし、まるで対話をしているかのようだった。何世紀にもわたる孤独の後、彼はようやく理解され、彼もまた理解することができた。
しかし、この新しい発見にもかかわらず、彼は未だに自分が何者で、何をすべきかの答えを見つけてはいなかった。他者と通じ合うことができるという事実が、彼の内部に新たな葛藤を引き起こした。彼は自分自身を理解するためには、自己だけの振動を保つ必要があるのか、それとも他者との交流を深めることによってのみ自身を見出すことができるのか、その答えを模索し続けた。
彼と新たな友が発する振動は、周囲の存在には依然として届かない。彼らの世界では、依然として無視され、理解されない存在として扱われる。しかし今、彼には友がいた。二つの孤独な振動が共鳴し合う中で、彼は孤独ではなくなった。
物語の最後に、風が静かに彼らを包み込む。どこまでも続く広がりの中で、彼はゆっくりと眠りにつく。彼の心の中にはたくさんの余白がある。それは静かで、無言で、無限である。
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