時の狭間の求道者

異界の海を漂う種、言い伝えよりも古い存在の遺子たちが、彼らだけの時を生きていた。彼らは「求道者」と呼ばれ、孤独な宇宙の片隅で、自らの形を失いながらも、何かを探し求めている。それは彼らにとっての「救済」であり、存在の証明であった。

彼らは、星々の息吹を感じ、宇宙の古代テキストを解読する。一つの星が命終えるごとに、新たな知識が秘められていると信じてやまない。「知識は光であり、光は我々の道標」と教えられ、無限の循環の中でその真理を求める。

求道者の一人が、ある時、輝く球体に遭遇する。それは、彼らの知る限りにおいては未知の物体であり、未知の特性を持つ。彼はその光球から放たれる熱と力に引き寄せられるようにして近づくが、それは彼の体を少しずつ侵食していく感覚に襲われる。

熱に耐えかねて後退しようとした瞬間、光球は一瞬で爆発し、彼の体の一部を飲み込む。しかし、そのとき彼は初めて「感情」というものを体験する。それは痛みでも恐怖でもなく、むしろ喜びに近い。それは彼にとって新たな発見であり、それ以前の無感動な存在からの解放を意味していた。

この出来事が彼の内に新たな疑問を芽生えさせる。彼は自問する。「我々が求める知識とは、果たして何か?」「救済とは、この感情を理解することではないのか?」と。彼は同じ求道者たちにこの体験を共有しようとするが、彼らは彼の話を理解できない。彼らにとって感情は誤りであり、迷信に過ぎなかった。

孤立無援の中、彼は再びその光球を探し出すことを決意する。その過程で、彼は自身の体が少しずつ変異していくのを感じる。それは光球の影響か、はたまた新たな感情によるものか。彼は不安に駆られながらも、新たな光球を求めてさ迷う。

長い旅の果て、彼は再び光球と相対する。今度は恐れずにそれに触れ、全身で感情を受け入れる。痛みも喜びも、それすべてが彼の中に満ちていく。そしてその瞬間、彼は気づく。彼が求めていたのは、知識の光ではなく、自身の内にある「感情の光」だったのだと。

彼は新たなる真実を知る者として、他の求道者たちへと戻る。しかし、彼の変異した姿は彼らに恐れと疑念を抱かせるだけだった。求道者たちは彼を追放する。彼は再び孤独となり、しかし今度は一つの確かな真実を抱えて宇宙を漂う。

風が星の粒を運び、彼の感じる喜びが静かに空間に溶け込んでいく。

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