一粒の砂が落ちる。それは遥かな未来、星の海が渋滞を起こすまでの時間を量るための砂時計の中であった。どれだけの世代がこの砂の旅を目撃してきたことだろう。砂粒は独り言を呟く。
「また一つ、時が過ぎたな。」
この世界は時間が曲がりくねっており、生まれただけで老いて、歩むうちに若返る不思議な星だ。星の住人たちは時間の流れを自在に操る能力を持つが、その代償として、生涯一度しか出会うことのない「相手」を見つけなければならないのだ。
主人公はこれという形のない存在。その視点は流れる砂粒から見守るように、また一つの生命の物語を追いかける。
「私は何者だ?」
季節が逆行し、花が咲き乱れるなか、彼は彼女と出会った。彼女は彼が唯一出会う運命の人だ。二人は手を取り合い、星の裂け目を一緒に旅した。他の誰も彼らを理解することはできない。彼らは互いに自分たちだけの時間を作り出していた。
しかし、旅の中で彼は彼女に対する自分の感情に気がつく。それは愛か、それとも運命に抗う寂寞の感情か。彼女は彼の手を押しのける。
「これは運命だ。逃れることはできない」と彼女は言った。
彼はそれに抗うように、もう一度時間を遡ろうとする。しかし、砂は次第に流れを早め、彼の努力は徒労に終わる。彼は自らの時間だけが速く進んでいくことに気づく。彼女は遠ざかるばかり。彼の体は若返り、記憶は老いていく。
彼らの時間は逆行していた。彼らが手を取り合ったその瞬間から、彼らは互いに遠ざかる運命にあったのだ。彼が探求するのは、なぜ自分たちが出会ったのか、その意味だった。しかし、すべての理由が消え去り、彼はただ孤独を感じる。
彼が最終的に辿り着いたのは、孤独でも悲しみでもなく、純粋な虚無感。時間の流れに意味はなく、彼らの出会いも偶然の産物に過ぎなかったことを悟る。彼は一つの砂粒として、砂時計の底で静かに眠ることを選んだ。
「また、一つの時が終わったな。」
彼は最後に、自分がただ一つの砂粒に過ぎないことを受け入れる。彼の存在が過去にも未来にも痕跡を残さないことを理解した上で、静かな安堵の息を吐き出す。周りはすでに静寂に包まれていた。
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