空の旋律

高く、青く、遠く。それが空の色であり、その中で一つの声が響く。生まれながらにして声を持たされた者。それは、古代の生命の光に満ちた存在であった。広大な森の上空で、彼または彼女は、淋しい歌を歌う。誰に聞こそうとしていた歌ではない。ただ自らの存在を確認するための歌。ただそれだけのための歌。

時間は流れ、季節は変わり、彼または彼女は成長した。他の生命体とは異なる経路を辿りながらも、常に空を舞台にして存在した。彼または彼女には、見えるものすべてが鏡のようだった。その反射には、自分自身が映し出されていると同時に、何か大切なものが不足しているように見えた。

ある日、彼または彼女は発見する。他の声の存在を。それは遠くから、しかし確かに自分と同じように孤独を乗り越えようとしている声だった。興味を抱き、彼または彼女はその声に向かって飛び続けた。日が昇り、日が沈む。空は彼または彼女を限りなく支え、風は時に優しく、時に厳しくその背を押し続けた。

長い旅の果てに、ついにその声の主と出会ったとき、彼または彼女は理解した。声の主もまた、自らの声を失いかけていたのだ。彼らは互いに励まし合い、共に歌うことで、それぞれの声が明瞭になることを学んだ。そして、次第に彼らは一緒に旋律を作り上げた。

しかし、ある風の冷たい日、声の主は言った。「私たちは違う。私の歌は私だけのものでなければならない。」と。それは突然の告白であり、彼または彼女にとって予期せぬ痛みだった。共に過ごした時間、共に創り上げた旋律は一体何だったのか。どこに真実があったのか。

彼または彼女は再び孤独を背負い、もと来た空へと戻ることにした。その旅の中で、再び自分自身の旋律を見つめ直す。誰かのためではなく、自分のために響かせる歌。その歌は自分だけの声であり、自らを深く理解する手段となった。

そして、空の深い青さの中で、彼または彼女は気が付く。自分の存在が孤独から生まれ、孤独を抱えながらも、それが自分自身を形作る不可欠な部分であることを。そして、空は広く、声は遠くまで届く。誰かがいつの日か、その歌を聴くかもしれない。その時、また新たな旋律が生まれるのだろう。

彼または彼女は、過去と未来をつなぐ一つの橋であることを受け入れ、静かに歌い続ける。風がその旋律を運び、時間がそれを織りなしていく。どこからともなく、新たな歌が響き始める。それが過去の反響であるか、未来の予感であるかは誰にも分からない。ただ、空は青く、旋律は永遠に響き続ける。

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