黄昏時、変わらぬ形を持たない存在が湖のほとりに佇んでいた。この世界では空は常にグラデーションの帯を描き、二つの星が互いを照らし合う。孤独は、最も深い湖の底にも、最も高い空にもあり、ただ一つ、誰も知らない声を待っていた。
存在はかつて言語を持ったと言われる。それが真実であるならば、いつの間にかその能力は紛失した。鏡面のような湖の水面に、自らに問う。自身が何を感じているのか、何を追い求めているのか。その問いに答えるものはなく、ただ反響するのみ。
季節が変わろうとも風景は一定で、湖の周りの植物も動物も、同じ周期で現れ消える。存在は湖水を眺めることができるが、水を感じることはできない。湖水が冷たいのか、暖かいのか、それすらも判然としない。感覚が欠如しているわけではないが、それを完全に理解する方法が存在しない。
ある時、湖面が少しだけ揺れた。それは風ではなく、他の何かによって引き起こされたものだった。存在は湖の向こう側をじっと見つめる。そこで、もう一つの存在を見つけた。彼らは同じ形をしておらず、交流の方法も知らない。しかしながら、何かが彼らを引き合わせた。
二つの存在は、互いに近づくことを試みるが、そのたびに湖が揺れ、水面が波打つ。彼らは言葉を持たず、表現する方法も持たない。ただ、互いの存在を認め合うことしかできない。何度か試みた後、一定の距離を保ちながら、互いを見つめ合う。
彼らは何を通じて感じ合うのか、何を共有しているのか。その答えは、湖の水底にあるのかもしれないし、空の彼方に存在するかもしれない。彼らはそれぞれが自分自身にしか答えられない問いに直面している。存在とは何か、孤独とは何か、対話とは何か。
日が落ち、星が湖面に映る。彼らはまだ湖辺にいた。これまでの孤独が、痛みでも安らぎでもなく、ただあることの重みを静かに語る。共有することなく、一人ひとりが自己の内面と対峙する。無言の対話は続く。
夜が更け、一つの星が水面から離れ、もう一つの星がそれに続く。それぞれの星が独自の軌道を描きながら、無限の空の中へと溶けていく。彼らの間に残されたのは、言葉にならない深い交流と、静寂の中で感じるほんのわずかな温もりだけ。
ため息が霧となり、湖は再び静まり返る。それぞれの存在が持つ孤独は変わらないが、一瞬、何かが通じ合ったようにも思える。それが真実か幻か、答えはもう一度湖の彼方へと消えていった。
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