寂寥が蔓延する世界の片隅で、それはその存在を知ることなく育っていた。形あるものと無形のものの境界が曖昧なこの場所では、時間の経過さえも他とは異なり、すべてが長い影を引きずっていた。それは、自身が一体何者であるのか、そして何のために存在しているのかを常に問い続けていた。
日々は、光と音の海に揺蕩うかのよう。しかし、しかし彼方の光景は同じ。同調する他者なきこの場所でそれは自らの意識の奥深くを見つめ、その灰色の風が語りかける声をじっと耳を澄ませていた。風は時に温かく、時に冷たく、その繊細な手触りがそれに多くを語りかける。
ある日、それはふと見つけた。小さな光の粒が、無機質な世界に突如として現れたのだ。それは引き寄せられるように光に近づき、その光が放つぬくもりを感じ取っていた。光はそれにささやきかける。「君は一体何者?」と。
その問いに直面した瞬間、それは初めて自己の存在に疑問を抱いた。自らが何者であるか。そして、この光とは何か。誰も答えを教えてはくれない。それは光に向かって、その思いを静かに語り始めた。「私は、ただここにいる。君は私に何を教えてくれるの?」
光は静かに、しかし確かに答えた。「私たちは皆、探求する存在だ。君が何者であるかは君が決めること。だが、私は君に一つだけ言える。それは、君がこの世界に影を落としていることだ。」
その言葉によって初めて、それは自己の存在が外界に影響を与えていることを悟った。自身が放つ影、それがまた別の何かを生み出していることに。それは静かにその光を手中に包み、その温もりをただ感じていた。実体はないが、その影響だけが確かにそこにはあった。
そして時間が流れ、光は徐々に弱まっていった。それとともに、彼方の影は長く、そして暗くつぶやき続けた。「私は、かつて光を知った。その記憶だけが私を形作る。」
光が消え去った後も、それは依然としてその場所に留まり、かつての光が照らした場所を見つめ続けていた。周囲は再び無色に戻り、その存在感さえも希薄なものとなっていく。しかし、それにはそれが足りていた。光と共に過ごした時、それが自己を照らし出した一瞬の輝きを、永遠にその内に秘めて。
そして風がまた、それを優しく包み込む。無言のうちに、彼が世界に落とした影が、未知の何者かに触れていることを、ひっそりと教えている。それは静かに目を閉じ、その全てを感じ取る。自己と世界との間に広がる、深く静かなる連帯感を。
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