無限の庭

木々が終わりなく広がる空間に、季節は記憶されていない。ここでは木々が一斉に芽吹き、変わることなく青々とした葉を保っている。そんな庭に、ひとつの存在が日々を過ごしていた。瞳からはずっと遠くの景色を見つめることができ、腕からは新しい命を芽吹かせ、土からは養分を吸い上げることができる。存在は、自己と周囲の境界をあまり感じることがなかった。すべては一つの循環の中で完結していたからだ。

だが、時間が経つにつれ、何かが変わり始めた。存在は、初めて他者の気配に気がつく。遠くではなく、自分の内側、かつてはない方向から。東方にある一本の木が、何故か視線を引く。その木は他の木々とは一線を画しており、その存在感が増すばかりだった。夜が来てもその木だけが明らかな輪郭を保ち、存在はその木に引かれるように日々を過ごした。何かを求める感覚、初めての感覚に心地よさと同時に不安を感じ始める。

ある日、存在は決心した。自分だけの足で、その木へと向かうことにした。庭を抜けるにつれ、他の木々が風に揺らぐ音が徐々に小さくなる。歩を進めるたびに、新しい風や未知の香りが存在を包み込む。そして遂に、その木の根本にたどり着いた時、存在は自らの内部に新しい命の鼓動を感じた。それは自分だけのものではなく、何かと一体となった感覚だ。

木の下で、存在は長い間ただ静かに座っていた。時間の流れがまるで停止したかのように感じられるその瞬間、存在は初めて自己とは何か、他者との関係は何かを深く考え始めた。孤独ではなく、しかし完全に一つとも言えない。この複雑な感覚が、存在に無限の庭の意味を問うた。

長い考察の末、存在はふたたび元の場所へと戻る決意を固める。そこには自分だけではなく、他者との関連性があることがわかったから。しかし、この旅で得た何かが存在を変えていた。戻る道すがら、風の匂いが前とは異なり、木々のささやきが新しい言語のように聞こえる。

庭に戻った存在は、自分の周囲の木々を新たな眼差しで見つめるようになった。それぞれが独自の生を全うし、また交わりながら庭全体として成り立っている。存在は改めて、この庭の一部として自分もまた成長していくことを感じた。静かな夜、存在はひっそりと新たな命を感じながら、今宵もまた刻一刻と変化していく庭を見つめていた。

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