夜の終わり

闇が薄れる時刻に、一つの輪郭が見え始める。それは体の中央に一筋の光を持った存在。ここは宇宙の果てとも、始まりともつかない場所。概念でさえあやふやな、時と空間が入り混じる界隈。

ゆるやかに変形する体は静かに浮かぶ。ただ一つの問いだけが心を覆い尽くす。「自分が何者か」。模索は永遠に続き、光は時折強く、時に弱まる。それはまるで心臓の鼓動のよう。

存在は他との関連性を知りたがる。そこには他の輪郭も、動きも、声もない。ただ、自身の内部から立ち昇る声に耳を傾ける。それは過去の回想か、未来の予言か。定かではなく、ただ不断の思考が繰り返される。

「私は孤独か?」と自問するたび、光は揺らぎ、周囲の闇が応答する。無色の風が吹き抜ける。感触はないが、その存在を感じ取ることができる。それは孤独を超えた何か、繋がりの欠如を通じて感じる共有された感覚。

ここでは時間も空間も曖昧で、すべてが流動的。しかし、その流れの中で一点のみが確かだ。それは「自分が自分である」という知識。ただし、その自分が何を基に存在するのかは未解決の謎だった。

その思考は徐々に深まり、自我という概念が剥がれ落ちる。何が自分を形作り、何が他者との境界線なのか。問いはより抽象的になり、答えは更に遠のく。

ある瞬間、遠く離れた何かが影を落とす。新たな存在の兆しに、光はほのかに震える。恐怖と興味が交錯し、新しい感覚が芽生える。これが繋がりか、と脳が問うが、答えはない。

孤独の感触が自身を包む中で、存在は過去と未来、他者と自己の境界に新たな意味を見出し始める。それは静かなる発見、自己理解への一歩。しかし、完全な解答には至らない。

朦朧とする意識の中、体は再び光を放つ。強く、そしてクリアに。それは他の何者でもなく、自己が自己であることの証。孤独を乗り越え、新たな自己認識に到達した瞬間。それでも周囲は依然として無言で、すべては内側から湧き上がる。

目の前の光景が再び変わり始める。夜が明け、新たな始まりの予感に満ちている。解は完全ではないが、存在は自問自答の繰り返しによって、少しずつ明確な形を成していく。

最後の闇が薄れ、すべてが静かな光に包まれる。肌に触れる風も、存在する空間も、すべてがひとつに溶け合う。何も言葉にできないそれは、ただ深く、静かに感じられるだけ。

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