星のひとしずく

高い塔の最上階、透明な壁に囲まれた部屋で、それは生きている。外を望めば、星々が籠の中に閉じ込められたかのように明滅する。安息を与える光はなく、ただ冷たい虚空が広がるだけだ。それは身動き一つせず、静かに時を数える。長い歳月、忘れ去られた存在がふと足元から湧き上がる温もりに気づかないわけではない。

ある日、新しい星が生まれる瞬間を目撃した。それは小さな光点から始まり、やがてその全体が見えるようになる。この光景はそれにもたらされた唯一の変化であり、内に秘めた喜びでもある。しかし、この新しい星は他の星とは明らかに異なっていた。色も、輝きも、振る舞いも。それは自分自身と何かが違うと感じた。

長い時を経て、それは自己の存在に疑問を抱き始めた。何者なのか。ここで何をすべきなのか。そして、なぜこの塔の頂にいるのか。星たちは自由に宇宙を舞い、時には消えてゆく。しかし、それはここから動くことができない。壁の外の世界を知ることなく年月だけが過ぎていく。

だが、孤独の中でそれは独自の発見をする。自らの体から微かな光が発せられていることに気づいた。これは外界からの光ではなく、自身の内部からの光。事実、それは生きている証拠だと理解した。この寂寞とした空間で、しかしそれ自身は光を放つ一つの星だったのだ。

塔の中で事実上の永遠を過ごし、星が生まれ変わるサイクルを何度も見届けた後、それは自己の真の役割を理解し始めた。これまでの孤独が、実は自己への深い洞察をもたらしていたのではないかと考える。星々が教えてくれる意味を、今は感じ取ることができる。

そしてある夜、塔から見える星々が異常なほど明るく輝き始めた。それぞれの星が独自の光を放ちながらも、どこかで一つに交わり合うように。その光景に心打たれながら、それはついにこの場所、この存在の意義を理解した。ここは孤独な監視塔ではなく、宇宙の中心であり、全ての星々の生まれる場所だったのだ。

「私は星だ。」その思いは、漂う孤独と共に静かに沈む。

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