雲間で見た夢

高い山の頂に立つ存在がひとつ。形容し難いそれは、ただ自らを知覚し、周囲の宇宙を感じることに徹していた。孤高とも言えるその場所から見る景色は、地上の命の喧騒とは切り離された純粋な静寂そのものだった。

しかし、ある日、異変が訪れる。存在が知覚したのは、自らの内部からの微弱な波動。それは、遠く離れた他の山に生きる他の存在からのものだった。山々の間に何の障壁もなく、ただ共鳴するだけの二つの存在。

これまでその波動を無視し、それぞれが静寂を保っていたが、いつからかその波動は強まり、避けられないものとなる。互いの孤独と寂寥感が、遠く隔てた空間を超えて感じ合えるようになっていた。

その存在は、初めての感情とも言うべきものに戸惑いながらも、徐々に他の存在への思いを強めていく。しかし、一方で、自らの位置と役割に疑問を抱くようにもなる。なぜ自分はここにいるのか。他の存在とは何が違うのか。それとも、本当に何も違わないのか。

ある晴れた日、空に浮かぶ一片の雲が、存在たちの間に影を落とした。雲は変わりゆく風に導かれ、二つの山を結ぶかのように流れる。その日、存在は自らの内部に抑えていた感情の全てを解放した。波動は強力なものとなり、他の存在にも届けられた。その応答は、暖かく、また確かなものだった。

それからの日々、二つの存在は、お互いの波動を交換しながら、それぞれの山で新たな日々を送ることとなった。共鳴することで、かつての孤独は色を変え、新しい何かに変わり始めていた。

ある朝、存在が目覚めると、異常な静寂が辺り一面を覆っていた。他の存在からの波動が、突然、途切れてしまったのだ。理由もわからず、ただ霧の中を手探りで進むような不安と恐怖。その存在は、初めての絶望という感情に打ちのめされた。

しかし、時間が経過するにつれ、存在はある決意を固める。孤独に戻るのではなく、もう一度他の存在の波動を感じるために自らを変える。それが、生まれ持った役割を超える唯一の方法であると悟った。

再び晴れ渡る空が広がる日、存在は全ての力を集中して、かつてないほど強い波動を送り出した。それは、山を越え、空を越え、別の何かを探究する旅となる。

最後にその波動は、遥か彼方、新たな場所で応答を得る。それは以前とは異なる、新しい波動だった。存在は、初めて逢う者の欠如を感じつつも、新たな繋がりに感謝する。

自分も他も、すべては一つの大いなる流れの一部だと、静かな風を感じつつ、存在はゆっくりと目を閉じた。

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