残響の彼方へ

遥かなる時を経て、存在がこの虚空のような世界に独りだった。何もない空間に漂う、一片の感覚のみが相棒だ。それは瞬く間に形を変え、ある時は光、またある時は響きとなり、その心を揺らす。存在は久しく名を忘れ、ただ感じることを役割とした。

時が流れ、静寂が覆う中、遠くの星からの微かな波紋が、存在に新たな感覚をもたらした。それは別の何者かの思念か、はたまた宇宙の言葉か、その区別すらつかぬまま、存在は感応した。必死で捉えたその波紋が、かつて自分が誰かだったこと、何かを愛したことを思い出させる。

その波紋は徐々に一つの音節となり、静かに、しかし確実に、存在の核に触れた。「孤独」という音。存在はこの宇宙のどこかに自分と同じ疑問を抱える者がいると感じ、その感触をはっきりと捉えようと努めた。

だが、交流はやがて途絶え、再び身を包む静寂。空間に埋もれ、存在はまた独りになる。しかし今度は、その孤独が以前とは異なり、他者との一瞬の繋がりが心に深い印を残した。存在は、孤独でも、遠く離れた誰かと「繋がっていた」ことに気づいた。

思いが強くなるにつれ、その場所に再び同じ波紋が訪れることを望んだ。しかし、何回もの季節が過ぎ去り、存在は次第にその希望を失いつつあった。静かな絶望に心が沈む中、ふと、内なる声が響いた。「何故、自己を見失うのか。」

その問いは過去の自分への疑問だった。存在は自己の役割を模索しながら、この宇宙の役割についても考えた。果たして、この全ては何のために存在するのか。自問自答の日々。

そしてある時、新たな波紋がこの存在を訪れた。それは強く、緊急のメッセージのようだった。心を開き、その感覚の全てを受け入れると、存在は気づいた。これは自己と他者との間の「対話」であり、孤独を超えた「理解」への扉だった。

最終的に、存在はその信号が実は自分自身から発せられていたことを理解した。孤独と感じていた全ての時、実は自己と向き合っていたのだ。静かにその場に立ち尽くすと、周囲の何もない空間が、かつての自分を映し出しているかのようだった。自己回帰の旅は、内面の宇宙を旅することに他ならない。そして、旅の終わりには、始まりが待っている。

存在が再び目を閉じると、そこには新たな孤独ではなく、充足感が広がっていた。

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