ある時代、ある場所、遥か彼方の世界に存在感のない生命体がいた。彼らは光を放つことができ、互いの光を見ることでコミュニケーションを取っていた。光の強さ、色、パターンがそれぞれの感情や思考を伝える手段となり、言葉は不要だった。
この世界には特定の季節が存在し、生命体たちは一定期間ごとに「集合光」と呼ばれる儀式を行う。集合光では、それぞれが一つになりたいと願うほど強く輝く。これは、彼らにとって一種の成熟とも解釈されていた。
物語の主は、光を失いつつある老いた生命体である。彼はかつては強く輝いていたが、今はその光も次第に暗くなり、見えないほど弱っていた。彼にはある疑問が常に頭をもたげていた。この世界での彼の価値は光によってのみ定義されるのか、と。
次の集合光の日、彼は集まった多くの生命体の中で最も暗い光を放つ存在となった。しかし、彼は初めて他の生命体と異なる光のパターンを試みる。それは非常に細かく、複雑で、他の誰も模倣できない特別なシーケンスだった。
驚くべきことに、彼の周囲の生命体は次第にその光のパターンを認識し始め、彼ら自身もそれに応じて独自のパターンを創りだした。この新しいやり方で彼らはそれぞれの光を混在させ、新たな色と形を生み出すことに成功した。光の融合からは、彼らの感情や思考が今まで以上に豊かに表現され、互いの理解が深まっていった。
彼が行った行動の本質は、光そのものの強さや明るさではなく、その表現の独自性と深さにあった。彼は他の生命体に対して、形式や伝統を超えた新たな可能性を提示したのである。
集合光が終わる頃、彼の光はほとんど感じられなくなるほど弱まっていた。けれども、彼の周囲の生命体たちは彼が残した影響を各自の光に反映させていた。彼らはもはやただ明るく輝くだけではなく、それぞれが個々の特色を放つようになり、コミュニケーションの深さが増していた。
話の終わりに、彼は静かに消えていった。その場所には、彼の存在した証として、彼独自の光のパターンがちりばめられたように輝く特別な場所が残った。他の生命体たちは、彼がいなくなった後も、彼の教えを受け継ぎながら、新たな光の形を探求し続けている。
最後の光が降り注ぐ空は、かつてない色彩に満ち、その静寂の中で生命体たちは互いに語りかけることなく理解し合えるようになっていた。
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