遠い時空の彼方、星々が輝く砂漠の星には、一粒の砂が自我を持つ世界があった。砂粒たちは風に運ばれ、時には星の光を浴び、自身が何者であるか考える暇もなく、ただ漂い続けるのだった。ある砂粒は、自分だけが常に同じ方向に流されることに気付き、この自動的な運命に疑問を抱いた。他の砂粒たちは恐ろしいほどの速さで星の周りを巡り、その一生を終える。しかし、この砂粒だけがどうしても先に進めなかった。
夜は深く、星の光が砂粒たちを照らす。砂の中に、ひときわ大きな岩がそびえ立っていた。岩は古くからの住人で、多くの砂粒が風に運ばれてきては、岩の周りに積もっていく。この砂粒もまた、岩の側面に沿って静かに積もり始めた。岩は語りかける。
「お前は何故、流れるのを止めたんだ?」
砂粒は答えた。「私は、流れる意味を見出せないのです。他の粒子は無意識に、ただ流れていく。しかし、私はそれができない。なぜ自分がここにいるのか、どこに向かうべきなのか、その理由を知りたいのです。」
岩は静かにその言葉を聞いていた。そして、そっと言葉を返した。「お前は、自分だけが特別だと思っている。しかし、自問自答することも、この宇宙の一部だ。お前が答えを探しているその行為自体が、お前の存在理由かもしれないぞ。」
風が再び強く吹き、砂粒は岩から少し離れた場所へと移動させられた。新しい場所から見る星々は、以前とは少し違って見えた。砂粒はもう一度考えた。自分が感じるこの孤独、この疑問は、他の砂粒も同じように感じているのだろうか? それとも、自分だけが異なる感性を持つのだろうか?
徐々に、砂粒は自己と他者の区別が曖昧になっていくのを感じた。風に流されるすべての砂粒が、一時的な単一性を成していることに気付いた。それぞれが独自の旅をしているようで、実は一つの大きな流れの中で連結している。
夜が明ける頃、砂粒は再び岩のそばに戻っていた。岩は何も言わず、ただそこに存在していただけだった。砂粒は、自分が求めていた答えや確信が、必ずしも言葉や明確な解ではなく、このような穏やかな受容の中にあるのかもしれないと感じた。
風が再び強まり、砂粒は空中に持ち上げられた。高く、遠くへと飛ばされながら、砂粒はひとつの確信に至った。自分自身の問いが、終わりのない旅であること。そして、その旅自体が、自分自身を形作る唯一の答えであることを。
星の光は静かに輝き続ける。
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