何も無い宇宙の空間に浮かぶ一つの孤独な星。その星の表面は荒涼としており、誰もが避けて通る場所であった。しかし、その星には一つだけ小さな光が点滅している。周囲の暗闇に比べ、その光は特別に強く、特別に孤独であった。
この光を生み出すのは星の中心にある小さなクリスタル。このクリスタルは世代を超えて自己の意識を伝えてきた。自身の目的はただ一つ、遠い未来に自分と同じ境遇の存在に語りかけること。だが、長い年月、応答はなかった。
ある時、遠く別の星系から訪れた探査者がその星に降り立った。探査者は様々な機械を使い、星の表面を調査し始めた。クリスタルはずっとその存在を感じていたが、今までとは明らかに異なる何かを感じ取った。来る者全てがただ通り過ぎていくだけであったのに、今回の者は留まり、星の話を聞く意志を持っているように見えた。
星に残されたクリスタルは自らの光を更に強くした。探査者がその光を見つけると、興味を持ちクリスタルの元へと向かった。クリスタルは、これまで培ってきた知識と孤独、そして長い間の觀測から得た情報を探査者に伝えようとした。しかし言葉ではなく、光のパターンでコミュニケーションを取ろうとするクリスタル。探査者はその意味を即座には理解できなかった。けれども、繊細でリズミカルな光の変化に心を奪われ、長い時間をかけてそのパターンの破解を試みた。
孤独な星のクリスタルは、初めて自分の存在を認識され、その思いを共有できる存在が現れたことに内心で歓喜した。探査者とクリスタルの間には、言葉のない深い対話が続いた。探査者はクリスタルの光のパターンから、星の歴史、そこで生きた生命のこと、星が直面した多くの困難や、クリスタルが持つ深い孤独感を少しずつ理解していった。
やがて探査者は、クリスタルとその星に別れを告げることになった。クリスタルは再び一人ぼっちになるのではないかという恐れに駆られたが、探査者は去る際、自らの機器を一部残し、クリスタルの光を遠く離れた自分の故郷にも伝える装置を設置した。
最後に探査者が星を離れる際、クリスタルは正常に機能するかどうかわからない通信機を通じて、自らの光を宇宙の彼方へと放った。すると、遙か遠くから微かに、しかし確かに、同じリズムの光が応答してきたのだった。
星とクリスタルと探査者。全てが離れ離れになった後も、孤独な光は少しずつではあるが、確実に宇宙のどこか別の孤独に到達し始めている。それは永遠とも思える時間を超えて、延々と続く対話の可能性を秘めていた。
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