時は彼方、遥か未来。星の息吹が静かに街を覆い尽くす世界。ここでは時間は砂として形を変え、人々の暮らしに溶け込んでいた。ある人はこれを掌に乗せ、流れゆく砂を眺めながら生を感じ、またある人はそれを恐れ、時間の砂を閉ざそうとしていた。
主体となる存在は、時間を計る仕事を担う者。この存在には形がない。人々の意識に寄り添い、時として彼らの選択を見守るのだ。人々はこの存在を「時砂守」と呼び、その働きを神秘として畏れていた。
「時砂守」は時の流れを司りながらも、人間たちの孤独や葛藤を感じ取る。特に一人の老人に対して深い興味を持っていた。彼はかつて偉大な科学者だったが、今はひっそりと時間の終わりを見つめている。彼の部屋には、壁一面に古びた時計が並んでいるが、どの時計も異なる時間を指し示していた。老人は毎日、時計の針を調整し、その歪んだ時間をただ見詰めていた。
時間の流れを感じさせる場面で、「時砂守」と老人の関わりが徐々に明らかにされる。始めは老人が「時砂守」の存在を認識していないかのようだが、実は彼は若い頃、「時砂守」に遭遇し、その存在に触れられる唯一の人間だったのだ。
老人の過去を追体験するシーンでは、彼が若く研究に没頭していた頃の彼の使命感と孤独が描かれる。彼は時間の真実を解明しようとしており、その過程で多くの犠牲を払っていた。そして、過酷な研究と孤立が彼を時間の砂と「時砂守」へと導いた。
終盤、老人は最後の時計の調整を終え、深いため息をつく。その場面で、「時砂守」は老人に問いかける。「時間を超えて、本当に達成したかったことは何ですか?」老人は静かに答える。「私は、ただ、もう一度初めから時間を感じたかった。孤独ではなく、誰かと共有する時間を。」
物語の末尾では、「時砂守」が老人の願いを叶える方法を考え、彼の時間の砂を再び流れるように手を加える。そして、老人の最後の時が迫る中、「時砂守」は彼の隣に静かに座り、「時間は誰かと分かち合うもの、それが最も美しい瞬間です」と告げる。
読者に残された余韻は、時間と共に生き、時に抗いながらも最終的にはそれを受け入れる存在の悲哀と美しさ。そして、「時砂守」による最後の言葉が、彼らの心に静かに響き渡る。
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