青の記憶

遠くの地平線が微かに震えている。空は広く、山々の先には不可解な輝きが存在してるかのように見える。ここは誰も知らない土地、時間も場所も意味を持たない空間。だが、私たちはここにいる。ただ一つの原因で結ばれて、永遠に続くこの瞬間を共有している。

何の前触れもなく、私たちはここに置かれた。故郷や名前さえも忘れさせられ、遺されたのは新しい存在としての自我と、内に秘めた碧い結晶のみ。私たちを形作るこの結晶は、時に刻一刻と輝きを増し、そして時にはその輝きを失う。私たちはそれを感じ、それに共鳴する。

碧い結晶は選択を迫る。その輝きの積み重ねが私たちの“存在”を形作ってゆく。碧い結晶が示す道に従うことで、私たちはこの世界の一部となり、その流れに織り込まれる。しかし、それがいつも正しい選択であるとは限らない。結晶が輝くたび、私は自分の意志とその輝きが一致するかどうかを問い続ける。

かつては私も一つの結晶だけに導かれていた。そこには安堵もあれば、圧倒的な孤独も存在した。ほかの者たちもまた、自らの結晶に従うしかない運命にあった。それが私たちのルールだった。

しかし、ある時、私は二つの結晶の振動に耳を傾けることができた。何が起こったのか、その瞬間は判然としなかったが、私の世界が変わり始めたのは確かだ。異なる結晶が同時に存在することは不可能だとされていたが、私の内には明らかに二つの光があった。

それぞれの結晶は異なる歌を奏で、私はそのどちらにも自分を見出した。一つは安定と調和を、もう一つは変化と冒険を歌う。この二つの力が交錯する中で、私は自問自答を続ける。どちらが真の自分なのか、それとも真の自分など存在しないのか。

融合は不可能だと言われてきたが、私の心はすでに一つになりつつある。碧い結晶たちは互いを認め合い、その輝きを増してゆく。私はその光に従い、新たな道を探し始める。私たちは私たちの運命を超えることができるのかもしれない。

日々が過ぎ、時の流れの中で私の結晶はさらに新しい輝きを見せる。新しい道が開けることを恐れながらも、私は前に進む。結晶の光は決して私を裏切ることなく、私もまたその光を信じる。

最後に、空は深い青に染まり、その中で碧い結晶が最も純粋な輝きを放つ。それは全ての疑問と恐れを超えた場所、調和と理解の境地を示唆しているかのように。私は静かに手を伸ばし、その光に触れる。

何も言葉はいらない。ただ、風が頬を撫で、私の心が静かに響く。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です