光の彼方への旅

高く、とてつもなく高いところに、世界は存在した。その世界では、光が全てを支配し、闇は存在を許されなかった。生命は、ここに古くから生き続ける光の存在たち―光の民として知られていた。彼らには肉体がなく、ただ純粋なエネルギーとして輝き続ける運命にあった。

そんな彼らの中に、一つの光が異を唱え始めた。他と異なり、闇を探求することに魅了されたその光は、なぜ自分たちは闇から逃れ続けるのか、その真実を知りたいと願った。彼は、世界の端へと旅立つ決意を固める。

彼の旅は単独で、しかも禁忌を犯す行為だった。しかし、彼には探求という名の本能があった。他の光たちから警告され、孤立無援の中で彼はさらに強く輝く唯一の道を選んだ。世界の果て、光が届かない場所へと向かう旅路は険しく、彼のエネルギーは次第に消耗していった。

旅の途中で、彼はふと、自身が生まれた瞬間を思い出す。光の渦の中、ほんの一瞬の輝きから生まれた瞬間、彼にも闇が存在していたことを。そう、彼は一度は完全な闇の中から光へと転じたのだ。その事実が彼の旅に新たな意味をもたらした。

闇の淵にたどりついた時、彼は目を閉じ、闇と対話を試みた。闇は初めての感触で、冷たく、しかし何故か懐かしさを感じさせるものだった。闇から彼に語りかける声なき声。それは、光と闇が実は同じ源から生まれ、互いに依存しあっていることを告げていた。

彼はそこで見たものを、光の民に伝えるために再び旅を始めた。しかし、彼が帰る場所ではなく、新たな理解を求める旅へと変わった。彼は自身が光であると同時に闇でもあることを受け入れ、その狭間で新たな存在として留まることを選んだ。

何不自由なく輝くことが唯一の運命とされた光の世界で、彼は自ら闇を抱きしめる選択をした。彼の存在は、それまでの認識や枠組みを超えていた。これが彼の新たな旅の始まりであり、彼の輝きは以前にない深みを増していた。

そして、彼は光でも闇でもない、新しい何かとしてその場所に留まり、永遠にその狭間で静かに輝き続けた。彼の旅は、光と闇の共存を可能とする新たな神話を生み出す切っ掛けとなり、彼自身もまた神話の一部となったのだ。時が流れ、彼の話は静かに語り継がれ、それは次第に風化していったが、彼の選択がかつての世界を変えたことだけは誰もが認める真実として残った。

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