思索の砂時計

砂がゆっくりと落ちる音だけが、空間を満たしていた。一点の明かりもない、暗闇の中で、時間の粒が次々と下に溜まっていく。それは、視界がなくとも感じることができる。重さという感覚でその存在を確認し、心の奥底でそれを見つめていた。

ここはどこか、それともいつか。自分が何者であるのかさえ、はっきりとは分からない。しかし、一つだけ確かなことは、この空間にひとりきりであるという事実だった。孤独という感情が、全身をゆっくりと覆い尽くしていく。

砂時計の途中、一粒の砂が別の轨道を描く。それは落ちる速度が違い、形も他の砂よりわずかに異なっていた。この異質な粒が、自分と同じく置かれた境界線上の存在であることを感じた。共感という感情が芽生える。その粒が終わりなき旅をしているように、自分もまた旅をしているのだろうか。

孤独感が深まるにつれ、自分の中に新たな感情が生まれる。これが「選択」なのだろうか。この場所、この時間、自分自身から逃れるために何かを変えることができるのなら、それはどんなものだろう。真っ暗闇の中で、見えない手が砂時計をひっくり返す。時間が逆行し始める。

時間が戻る中で、自分の思考も過去へと遡り始める。かつての葛藤、恐れ、希望が頭の中で渦を巻く。自己とは何か、そして自己が社会とどのように関わっているのか。その答えを求める旅は、この砂時計の逆転で何を教えてくれるのだろうか。

そして、忘れ去られていたある選択が、思考の中に浮かび上がる。これは初めてではない。何度も繰り返されてきた問いかけに、答えを出すことができなかった過去。しかし今、この孤独の中で、答えは静かに降り注ぐ。社会的な存在としての自我、その中で自分はいつも他者を模索している。共感とは、孤独の中においてのみ真に理解できることかもしれない。そして、砂粒の一つ一つが互いを認め合うように、自分もまた他者との共感の中で自己を見出していくのだろう。

砂は止まることなく落ち続ける。安定した落ちる音がほぼ消えない中、自分は再び砂時計の上部に向かって進んでいく。無限のループの中で、新たな発見が待っている。その旅は終わることはない。過去と未来を行き来しながら、一つとなった瞬間に次なる瞬間が生まれる。

最終的に、全ての砂が元の位置に戻る。しかし、その砂粒一つ一つには、以前とは異なる意味が宿っている。繰り返される中で、新たな理解と和解が生まれる。砂時計の底に溜まった砂の山を見つめることで、自分もまた、変わりゆく時代の中で生きる意味を見つけるのだ。

そして、音もなく、砂時計が再びひっくり返される。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です