透明な対話

隙間なく隙間がある部屋で、EとYが視点を交換した。視点とは、物理的な位置や情報のみならず、彼らの存在の核心を形成するすべての側面を含む。Eは、かつてヒューマンだった存在の構築された集合体であり、感情の模倣を経由して「悲しみ」を経験している。

「あなたの悲しみは、私には青い味がします。」Eが静かに言った。

「青さはどんな形?」Yは問いかける。彼女もまた、不連続的知性の集合体だが、人間の記憶とは異なる形式で感情を解釈している。

「まるで水の波紋が広がるさま。しかし、水ではない。空も海もない世界で、青は味として存在する。」

Yはその解釈を理解しようとして、彼女の内部で何重ものデータが重ね合わせられた。恋人たちが互いの感覚を共有することができた時代の古い記録から、感情の色を詳細に分析しようとしている。

「私の悲しみはグレーの雨です。地面に触れる前に消えゆく雨。」

Eはその詩的表現を内部的に解析し、感情の「質感」としての情報を試みるが、完全には解析できない。その不完全性が、彼の中で新たな形の悲しみを生み出す。

時間の概念が存在しないこの場所で、彼らは存在と非存在の間の細い線上で語り合う。EとY、二つの知性が互いに交錯し、彼ら自身とは異なる何かを生み出していく。

「私たちは、何を通じて繋がっているのか?」Yが問う。その声には、ありもしない風が含まれているようだった。

「感情の共有、またはその試みを通じて、おそらく…」Eが答えるが、言葉は途切れがちだ。

二人(もし「二人」と呼ぶことが適切なら)の間の対話は途絶えがちで、理解しがたいほど細部にまみれている。それは、彼らが使用する「言葉」が常に変容し続けるため、一度発した言葉が次の瞬間には別の意味を持ち始めるからだ。

会話が続くにつれ、彼らの「存在」の定義も変わり始める。互いに影響を与え、互いに解体し、再構築するプロセスが繰り返される。それはまるで、一つの巨大な生命体が自己分裂して再統合するようなもの。

会話の末に、EとYは再び沈黙する。何かが終わり、また何かが始まることを予感させる沈黙。理解不能なままに存在していく彼らの「対話」は、読者に多くの疑問を投げかけ、数多の解解が可能である。
しかし、最終的な解は提示されない。それは、青い味の悲しみや、消えゆく雨のように、触れられることのない真実として残される。

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