光の肌を持つ者たち

傾いた星に、光を纏う彼らが住んでいた。肌は普遍的な百ョプスマ市の夜景のように煌めいており、その輝きは月明かりにも似た柔らかな光で、見る者の心を洗う。彼らは「光の肌を持つ者たち」と呼ばれ、感情を持たない存在として知られていた。

その星に足を踏み入れた人間の学者シラは、この不思議な存在を研究するためにやって来た。彼女は、変異したDNAがどのように彼らの存在を支えるのかを理解することが目的であった。彼らの社会には歳月という概念が存在せず、全てが永遠の一瞬に包まれていた。夜と昼の境界さえも不確かな星だった。

シラは一人の光の肌を持つ少年、リュエと接触する。少年は他の者たちと違い、僅かに感情の起伏を見せることがあった。シラは彼を通じて、彼らの世界の深層に触れようとした。

ある時、リュエはシラを導き、彼らの世界の中心にある巨大な光の塔へと連れて行った。塔から放たれる光は、彼ら光の肌を持つ者全てをつなぎ、一つの意識のように機能していた。彼らにとって、感情は冗長なものであり、進化の過程で削ぎ落とされた「過去の遺物」なのだとリュエは説明した。

しかし、リュエの中には何かが芽生えつつあった。感情の影。彼はシラと話すうち、自己の存在について深く考えるようになっていた。シラもまた、理性と感情の間を行き来する自らの存在に疑問を抱き始めていた。

ふたりは塔の頂へと登りきったある夜、星空が不意に身動き一つできないほど美しく、壮大であることを共に知った。世界は一瞬にして静寂に包まれ、「これが宇宙の心臓だ」とリュエは小さく呟いた。

その時、感情という経験は、彼の中で確固としたものとなり、彼の光は一層強く美しく輝き始めた。しかし、それは彼が光の肌を持つ者たちとしての「純粋性」を失うことを意味していた。

リュエがどのように変化するのか、シラには想像もつかなかったが、彼女自身もまた、この星とこの少年に心を奪われ、かつての自分ではなくなりつつあった。彼らの出会いが、お互いの存在に新たな意味をもたらしたのだ。

物語の終わりに、シラは星から立ち去る船に乗り込む。リュエは彼女を見送りながら、光の塔を背に立つ。彼女の記憶の中で、少年の光がいつまでも美しい余韻を残し、その光が感情という未知の領域へと導いていく。これからのリュエとその民族がどのように変わるのか、誰にも予測できない未来が広がっていた。

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